畑土の鎮圧についてのお話し

野菜の皆さん、「フカフカの畝」と「硬めの畝」どっちがお好み?

さて季節は3月、まだ寒いですが家庭菜園の畑作りは順調でしょうか?ナス科の野菜苗達はビニールハウスですくすくと育っている頃ですね、ウリ科も播種が開始される頃合いでしょうか。そんなわけで苗達を受け入れる畑の準備も始めていかねばなりません。やることはたくさんあるのですが、ここでは「畝の鎮圧」について少しお話ししたいと思います。

ここで、ひとつ皆様にご質問です。植物(の根っこ)にとって「フカフカの畝」と「硬めの畝」、どちらが快適と思われるでしょうか?どうでしょうか?ほとんどの方は「フカフカの畝」の方が良いと思われているのでは無いでしょうか。

写真 正解は条件付きですが「硬めの畝」です。うそや〜雑誌や書籍には「フッカフカの畝に仕上げましょう」とか書いてあるし!みたいなご意見が聞こえてきそうですね?
でも、「硬めの畝(条件付き)」が良いと言うのはちゃんとした理由があるのです。

 

もし、ご興味があれば簡単に理屈を書き記しておきます。(それでも結構長文になってしまいました...。)ページの下部へお進み下さい。
とりあえず、じゃあ実際にやるとどのぐらいの硬さがベスト?と言われたら、畝を立てた後、その上を歩いても「足が沈まない程度の硬さ」が良いと思います。では、実際にやってみましょう!


写真今回はトラクターで(いつもは備中でガンガン行くので凸凹)真っ平らにしてもらいました。畑土は真砂土ベースで、毎年堆肥やらもみ殻やらを入れて土作り中。やっと最近こなれてきたかな〜と言ったところ。

「良いな〜トラクター。小型のトラクター欲しいなー!」

で、文明の利器を使用し、めでたくいわゆる「フカフカの土」になったわけですが、このままではよろしくない。

  
踏んでみるとズボッとこれだけ沈みます。

写真と、言うわけで鎮圧しなければいけないわけですが、鎮圧ローラーなど持ち合わせていませんので「踏み」ます。

自らの体重(約70kg)を利用してチマチマ踏み固めます。

半歩づつカニ歩きでどんどんチマチマ隙間無く踏んでいきます。今回はツル物用の平畝に仕上げます。

  
全面を踏み終わりました。キャタピラーの作業車で畝の上を走ったようですね。


写真鍬を使って叩きつつ、足で凸凹をならしつつ整地していきます。

レーキで表面をならして整地完了。

  
この畝の上を歩いても、足は沈みません。良い感じに鎮圧出来ました。
写真後はひと雨当ててからビシッ!とマルチを張れば完成。私の畑では、西瓜やメロンは定植時に植え穴潅水したら、後は着果し始めるまで1回も潅水しません。鎮圧された圃場はそう簡単には水は切れませんよ〜!さらに、ツルの整枝作業をするとき躊躇無くマルチの上をずかずか歩きますよ〜。足が沈みませんので破れません。

水やりをせんでも良いのは楽やわー!水やりの労力を別のことに使えば色々な作業が出来ますな。

畑土の鎮圧(土壌密度)についてのお話し

では、ちょっと眠たい話を致しましょう!一般的に雑誌や書籍、さらには近所のおじいちゃんが「フカフカした畝がよい。」「一旦畝を立てたら絶対に踏んではいけない。」とか書かれたり、言われたりしています。「フカフカの畝の方が根張りが良く生育が良い」とか「おいしくなる、味が濃い」とか言われていますが、本当のところはどうなのでしょうか?
土質にもよりますが、フカフカしている状態を別の言い方で言い直すと「土壌に隙間がたくさんある」と言うことです。この隙間がたくさんある状態の土が植物の根にとってどういう影響を及ぼすのか、ちょっと想像してみましょう。
雨が降ったとします。そうすると隙間がたくさんある土には水がいっきに入ってきます。土の中の隙間に水が貯まり根が水没するスピードが速くなります。さて、雨が上がりました。そうすると今度は隙間に入っていた水が一気に排水され空間に戻ります。つまり、どういう事かというと「隙間の多い土は乾湿の差が激しい」と言うことです。硬めに締まった土の場合はこの差はもっと緩やかに行われます。
さらに隙間の多い土では水分を保持する能力も低くなります。毛細管現象と言うのを小学校の理科で習ったのを思い出して下さい。一定の密度があると水が吸い上げられる現象です。畑を30cmも掘ればよっぽどの干ばつでも無い限り、土の色が変わる位は水分があります。フカフカの土は密度が足りずにその境界線で毛細管現象が途切れてしまい水分が上がってこなくなります。つまり潅水を怠ると「激しく乾燥する」畝になっていると言う事です。
今度は晴れたとします。太陽光線が地表を照らすと地温が上がります。隙間の多い土の方が地表面の温度の上がりが早いです。しまった土はジワリジワリ緩やかに上がります。夜が来ました。太陽光線はなくなり地温が下がり始めます。隙間の多い土では地温の下がりもはやいです。しまった土では温度の下がりも緩やかです。イメージすると、熱々のおにぎりはなかなか冷めませんが、お皿の上で崩してやるとすぐに冷めますよね...。つまり「隙間の多い土は温度変化が激しい」ということです。
「乾湿の差が激しい」「温度差が激しい」時に「凄まじく乾く」、そんな「フカフカの土」は、はたして本当に植物の根は快適でしょうか?
さらに付け加えるなら、フカフカの土に潅水をすると土が少しずつ沈んでいきますよね。つまり、生育初期に張った根が時間とともに締め付けられていると言うことです。これは根にとって生育初期と後期で環境が大きく変わると言うことを意味します。これは辛いんじゃないでしょうか。
数十トンの重機が踏みしめたのならいざ知らず、たかだか70kgの私が畝の上に立って沈まないぐらいの硬さの土というのは、植物にとってどうと言うことはないレベルです。世の中の雑草は耕起などせずとも元気に生育していますよね。逆にフワッとした土の方が植物にとって自然界ではあり得ない環境ではないでしょうか。
では硬ければ硬いほど良いかというとそうではありません。水も酸素も必要ですし、根が伸張するスペースも必要です。それぞれの植物にとって適度な土壌密度である必要があるわけですが、それは、私たち人間が考えているほど「フカフカした土」ではないと言うことです。人間の先入観でフカフカした土が良いと勘違いをしていて実は超スパルタ栽培をしていたかもしれませんね...。
まとめると、乾湿・温度の変化が少なく、最低限の空気があり、根の伸張に必要なスペースの空いている土壌というのが、環境的には理想です。土壌条件にもよりますが、ザックリとした目安の話をすると畝立て後、私がのっても「足が沈まないぐらいの硬さの畝」が目安というわけです。お堅い言い方をすると「団粒構造が維持された硬目の土壌」って事ですね。
そうそう、最後に「硬めの畝(条件付き)」の条件の話をしておかないと。それは、水田転作などの「粘土」の圃場。乾いている時に起こして鎮圧する分には良いのですが、多湿の時に鎮圧すると土壌密度が上がりすぎて、酸素も無ければ根を張るスペースも無い、「陶芸の土」のような状況になってしまうので、ここだけは注意が必要です。
ふうぉ〜っ!長い!長文は好かん!ここまで読んだ貴方はすごい!(書いた私もちょっとすごい)土壌環境が安定するとビックリするぐらい作も安定しますよっ是非試してみてねっ!

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