呼び接ぎにチャレンジ!

さ〜てさて!皆さん大好き育苗ですねっ!ここはひとつ、接ぎ木苗の育苗にチャレンジしてみましょうか!成功率重視!少量生産OK!育苗簡単!「呼び接ぎ」です!!
世の中には色々な方法で接ぎ木苗が生産されています。「さし接ぎ」「割り接ぎ」「ピン接ぎ」etc...。それらの中で古くからあり、成功率が高く作業が簡単なのが「呼び接ぎ」。ただこの呼び接ぎは、大量の苗を生産するには作業にやや時間がかかり、仕上がりのビジュアルが今ひとつ。そんなわけで、本職の育苗屋では現在あまり行われていませんが、家庭菜園ならば「呼び接ぎ」がベストです。接ぎ木苗の性能は劣りません、見た目が不細工なだけっ!!
必要な物は下記の通り。(スイカの場合)
●良い感じに育苗した穂木(大体播種してから10日くらい)
●良い感じに育苗した台木(穂木の1日〜2日前に播種する)
●良い感じに湿った培土の鉢上げ用ポット(作業の前日には十分潅水しておく)
●カミソリ(出来れば新品が良い)
●接ぎ木クリップ


刃を引っ張り出すときはくれぐれも注意して下さいね!小さなラジオペンチを使うと良いですよ。
次は、穂木・台木ともに土をかるく払います。台木の根は触らずに接ぐ、いわゆる「居接ぎ」も方法としてはアリなんですが、払ってしまった方が作業が楽なんです(私は)。
大ザックリとババッと払えば良いですよ、それよりも接いだらすぐに仮移植しますので、根を傷めないようにしてやって下さい。
また居接ぎをする場合、台木の育苗は左画像のように1ポットにつき1本ずつになります。この状態のまま接ぎ木して、穂木の根は台木の横に穴を空けて埋めます。
また、台木と穂木を時間差を付けて同じポットに播種し、両居接ぎをする方もいますね。

茎径の3分の2を切り込み、3分の1を残します。穂木は双葉へ向かって上へ切り込み、台木は根に向かって下へ切り込みます。
人差し指の先に乗っけてカミソリを恐れずゆっくりと一発で切り込みます。カミソリを怖がってつまんでやると、ぷるぷる震えて余計に太刀筋が鈍ります!

合体!! 言葉を並べて説明するとまだるっこしい...。こんな感じです!
穂木と台木の切り込みを逆にしちゃダメですよ〜。水は根から葉へ行きますよ〜!

クリップオン!接いだ部分を密着させるイメージで。

呼び接ぎを行う際、穂木と台木の根の高さが合わないことが多々あります。
が、あんまり気にしなくても良いです。ポットへ仮移植する時、浅い方にあわせてやればOKです!

鉢上げ用のポットは、必ず前日に潅水を終わらせて、培土の含水量を安定させておきましょう。さらに、鉢上げ当日はポットをビニール袋などに入れて、直射日光の当たる所へ置いておき、少なくとも地温を15度前後まで必ず上げておきましょう。
可能であれば、20度〜25度位まで上げてやるとなお良いです。日なたに置いておけば、必ず地温は上がります。早めに準備を始めましょう。
接ぎ木後、2日ほど軽く遮光し萎れが無ければ通常管理に戻し光に当てます。(さすがに軸に半分以上切れ目を入れているので、直射日光はちょっとキツいよね。)
遮光資材は何でも良いのですが、私は不織布の切れっ端を使用。(良くテレビや家電を買ったとき、本体を包んでいる白いペラペラの布、あれです。)
台木の芽は指でつまめる大きさになったら除去します。何度が再生するときがあるので、1回とったからと言って油断しないように。
(そりゃあ、台木も自分の新芽を育てたいわな。気持ちはわかる。けど、あきらめて!)

こんな感じです。外側の葉と一緒に新芽もとれているでしょ。これを逆向けでやると大体新芽の一部が残って、また再生してきます。
接ぎ木後、10日もすると穂木の葉もムクッと動き出しますので、いよいよ穂木の自根を切り離し台木の根で活動させる準備をしましょうかね。

お役目ご苦労様でした。また来年お願い致します。
切り込みを入れた後、通常管理で日中しおれなければ、台木と導管は十分つながっていると判断して良いです。
しおれるなよ〜。しおれないでくれよ〜。

ここまで来れば、もう一安心。通常管理を失敗しない限りは、呼び接ぎは、ほぼ成功と見て良いでしょう。
接ぎ木直後にした不織布の遮光管理と同じでOKです。
台木の芽は何度が再生するときがあるので、1回とったからと言って油断しないように。
はいっ、西瓜の呼び接ぎ4本完成です。刺し接ぎや割接ぎは接ぎ木後の養生が難しいですが、呼び接ぎなら大掛かりな施設などなくても、実生苗を作れる方なら大丈夫です。

育苗が進むにつれ、接合箇所は太くなっていき、定植サイズまで来るともう外れることはありません。
見ての通り完全に癒合しています。ただ、接合部のビジュアルが「接ぎ木してあるな!」という感じになります。接ぎ木苗の性能的には劣りません。不細工なだけです!!

ガッチリ癒合した接ぎ木の部分、中はどんなふうになっているか気になりません?導管ってどんなふうに癒合しているの?台木と穂木の境目はどうなっているの?そこで!皆さんの代わりに私が1本真っ二つに割ってみましたよ!パッか〜ん!
ほうほう、なるほど、呼び接ぎ部分はこんな感じで癒合しているのですね。台木から穂木へぶっとい導管が直結されています。ここを通じて養分をグイグイ送るわけですな。
で、実際に栽培して呼び接ぎ部分はどんな感じになるかというと、こんな感じになります。台木の双葉へ繋がっている茎は上体が無いためたいして太くなりません(菜園に定植後しばらくして切っちゃっても問題なし)穂木の西瓜はどんどん生育しますので台木と供に太くなっていきます。完璧に癒合し一体化していますね、美味しい西瓜に丈夫な根っこ、1番初めにこの接ぎ木と言う技術を考えた先人に敬意と感謝を申し上げないといけませんね!

おまけ...♪
スイカの栽培が無事終了して、畑を片付ける前に、最終的に呼び接ぎの接合部はどうなっているか見てみましょうか!
引っこ抜きます!なかなかしっかり根を下ろしています。根は白いですね、病気の気はありません健康です!そして、また半分に切ってみましたよ、パッか〜ん。
穂木の「西瓜」と、台木の「夕顔」完璧に癒合していますが、同じウリ科の植物同士でも、やはり色や繊維質なんかは違いますね〜接合面がクッキリわかります。面白いです!この後、力任せにねじってみましたが、接合面は全くもってちぎれません。呼び接ぎでも接ぎ木の性能は劣りませんよ!